2010年6月1日火曜日

驚きももの記 バラの日々

この日曜日 私は中田邦子さんの作ったバラに囲まれていました。
斜面を利用して作られたバラ園は 彼女がまずその場所を選び 作り上げていった庭なのです。

(これもバラなの!?) 

到着したときから 一歩進むごとに 私と友人はそのバラの色や形の多様さにびっくりしたり 感嘆の声を上げたりーーそれはおそらく 花屋さんでは決して見かけるものではないことは 一目でわかりました。緑の自然の中に咲き誇るバラ そんな中で中田さんのお話をうかがったのです。もともと画家で 彼女の絵もかかっていましたが 描かれた色の鮮やかさ、華やかさ 明るさ 何よりも命があふれているのはご本人そのものでした。

バラが好きで好きで、次々と植えていったバラは どの隣にどのバラと 色や形などを考えて植えられているのは さすが画家です。 今ではバラ園を作りたい人は 中田さんのアドバイスを求めてくる人が多いとか。その日もバラ愛好家のグループがおいでで バラをさして これは何ねーーという声が聞こえていました。
化学肥料はできるだけ避けて 堆肥からつくる という彼女は あちこちに出かけていって バラ園を設計したり 作るお手伝いをしておいでということでした。バラにお金をつぎ込んでしまったわ!大きな帽子の下から 少し日焼けした太陽のような笑顔が素敵でした。


たくさん聞かせてくださったお話の中にこんな話がありました。
そこから 少し行った自治体経営の病院のバラ園は そのときもう手入れがいきとどいていない なぜなら昨今の例にもれず 予算がそこまで回らないから、ときいた彼女は バラの苗を200本寄付したのです。


ご存知のようにバラは とても手のかかる植物です。病院にバラの専門家がいるわけでもなく そのままほおっておくわけにも行かず しばしば手入れ方法を助言したり 手伝いに行くことになりました。
丹精の結果 美しいバラがつぎつぎと咲くようになりました。

 ある日 気持ちのいい空気と光の中で手入れをしていると 光の反射している 大きなガラス窓ごしに誰かがじっと見ているのに気がつきました。それは 車椅子にのった青年でした。彼の 顔つき そして 衣服の上からでも見て取れる体の情況に  中田さんは 見た瞬間 この人に残された時間を知ったといいます。
そこにはホスピス棟もあったのでした。
その車椅子の青年は  何かから解き放たれたように いつまでも静かにバラに見いっていたといいます。 
バラに注がれたまなざしは うっとりとした、 何か地上で平安を得たように。いや それどころか まるで時を超越した至福の表情のようで 中田さんの眼にやきつき今でも忘れられないそうです。

私 もう いい! これでいいと思ったの!
人間の幸せって お金でも名誉でもない。有名になることでもない。
こういう ほんの一時が私に与えられたことが バラを作り続けた私の最高の幸せの一瞬だって!
今までバラを育ててきたのは このときのためだったのだって。

風が起こり バラたちが一瞬甘い香りをいっせいに送ってくれる、そんな中で 彼女の話を聞いた私たちは 心の深いところで 限りない共感と 暖かいものが流れているのを感じていました。   

花をいけ続けることで そんな貴重な機会に恵まれたら。。。
私も中田さんにあやかりたいと思いました。 








  

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